手法
まずデータを疑い、それから結論を出す
マーケットデータはスピードを、原資料は答えをくれる。両者が食い違ったら原資料を信じ、その食い違いを書く。
01
データベンダーはどこで間違えるのか
売上高、利益、GAAP EPS、営業キャッシュフローといった基本の数字は、たいてい正しく転記されています。問題はベンダーが自分で計算した指標です。実際のリサーチで出くわした例:
- フリーキャッシュフローの定義が不明で、決算書から計算し直すと数倍の差があった。
- 「予想PER」が来期の EPS を使っていた。決算期が暦年とずれる会社では、2年近く先のバリュエーションを見ていることになる。
- 営業利益に商標の減損が足し戻されていて、GAAP と一致しない。
- 評価益が「有価証券売却益」と表示されていた。
- 最も重大なリスク(オフバランスの保証、税務訴訟、後発事象)は 10-Q や 8-K の本文にしか書かれておらず、構造化データには一言もない。
02
何を確認するか
| 項目 | 見るもの | どこで確認するか |
|---|---|---|
| 基本の数字の照合 | 売上高、営業利益、純利益、GAAP EPS、営業キャッシュフロー | XBRL を四半期ごとに照合 |
| 利益の質 | 純利益が投資収益や評価益でかさ上げされていないか | 10-Q / 10-K の Other income の注記、会社の調整後 EPS |
| キャッシュフローと運転資本 | 営業CFと純利益の関係、売掛金回転日数、在庫構成 | Liquidity and Capital Resources の章 |
| 負債と資本配分 | 社債の条件、自社株買いと配当、残りの枠 | 8-K item 8.01 / 2.03、10-Q |
| オフバランスの義務 | 保証、購入契約、未開始のリース、VIE、後発事象 | 直近の定期報告以降の 8-K |
| 非 GAAP の定義 | 定義が変わっていないか、過去と比較できるか | プレスリリースの non-GAAP の説明 |
| 集中度 | 上位顧客が売上高や売掛金に占める比率 | 10-K / 10-Q の注記 |
| ベンダーの派生指標 | フリーCF、予想PER、Normalized Income など | 決算書の数字で計算し直し、訂正表に記載 |
03
スコアカード
| 項目 | 主な根拠 | 採点の仕方 |
|---|---|---|
| ファンダメンタルズ | 売上成長率、利益率の傾向、ROE | 同業並みが3点。成長率と利益率の方向で上下させる |
| バリュエーション | 今期PERの同業中央値との比較、PEG | 同業より割安なほど高得点。PEG が高すぎれば1段階下げる |
| モメンタム | S&P 500 に対する超過リターン、移動平均との位置 | 多くの期間で勝ち、200日線より上なら高得点 |
| 決算の質 | 営業外収益の比率、FCF/純利益、売掛金の傾向、定義の変更 | 5点から始め、問題が見つかるたびに減点 |
| リスク | ボラティリティ、ドローダウン、顧客集中、レバレッジ、オフバランス、訴訟 | 点数が高いほどリスクが低い。5点から減点 |
すべての点数に具体的な数字を添えます。データが足りなければ「未評価」。5項目の加重点から推奨レーティングを出します。ルールはレーティングの定義へ。
04
やらないこと
- 正確なふりはしない。確認できなければ「未確認」、推測には「推測」、試算には「試算」と書く。
- 遅延を隠さない。株価データには遅延があり、各レポートにデータ時点を明記する。
- あなたの代わりに決めない。レーティングはすべての読者に向けたリサーチ上の見解で、個人の状況を前提にしていない。